書評:「日本海軍はなぜ過ったか――海軍反省会四〇〇時間の証言より」 | 京都プランナー日記

書評:「日本海軍はなぜ過ったか――海軍反省会四〇〇時間の証言より」



この本は、前回取り上げた『日本海軍400時間の証言―軍令部・参謀たちが語った敗戦』を受けて企画された、識者による県談を書籍として出版したものです。

結論から言えば、NHKによる著作と比較すると新しい情報はなく、また情報の深さもそれ程ではないため、あまり語ることはない内容でした。2時間もあれば全て読み通すことができてしまいます。

諸氏のこれまでの活動を毛頭否定するつもりはありませんし、特に半藤一利氏の『日本のいちばん長い日』は歴史のポイントとなる瞬間を克明に捉えた、非常に素晴らしい著作だと思います。

ただ、やはり対談集という形式と、テーマの難しさから、視点が被害者側の内容になってしまい、大戦略的な観点からのレビューはあまりできていない印象でした。
また、感情的に過ぎる表現が目立つ点も含めて、既視感を覚える内容であることは否めません。

対談の中で「歴史は連続性があるもので、この部分だけで判断してはいけない」としながら、「明治が築き上げたものが大正・昭和で全て滅んでしまった」と断じてしまっている点も少々無理がある印象です。


この書籍のターゲットは若い人(この若い人、という表現がどのレンジを指すのかは少々判別がつきにくいですが)ということですので、可能であれば悲惨さや同情だけではなく、国際的、相互的な視点から見たレビューをいただきたかったな、と思います。


日本海軍の組織から教訓を得ていこうとするのであれば、原典に当たるのがやはり良いように思いますので、機会があれば原著の『[証言録]海軍反省会』を当たっていきたいと思います。