これは面白い:「ヒトヒトリフタリ」 | 京都プランナー日記

これは面白い:「ヒトヒトリフタリ」

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この本ほど表紙と内容、底に流れるテーマにギャップがある漫画も珍しいのではないでしょうか。

授業をサボりがちな18歳の女の子の守護霊が、たまたま就いたのが余命短く世論の支持もない総理大臣。その総理大臣が死の淵をさまよったおかげで、普通の人間には見えない守護霊の女の子が、総理大臣には見えるようになってしまった。それをひとつのきっかけとして、総理大臣が自信を持ちながらあるべき一国のリーダーに成長していく…というのは一見コメディータッチなストーリーです。なぜか女の子のリヨンは関西弁です。


しかし、この漫画のテーマは原発問題。
第4巻以降は著者である高橋ツトム先生のものともとれる重厚かつ明確なメッセージが伝わってきます。

また、世界から最も危ないとして注目されながら、日本国内では何故か(というか理由は明白ですが)報道されることのない福島第一原発4号機にスポットを当ててている点でも凄いインパクトがあります。

第5巻の総理大臣の行動やメッセージはまさにこの国土に住む人であれば刮目して見るべきで、そこに対して何かを感じて欲しいと思わざるを得ません。


ヤングジャンプで連載されているのですが何故か後ろの方で、私個人としては原子力ムラの反発があるのではないかと疑ってしまうくらいです。表紙とメッセージ性のギャップがありすぎるのでしょうか。それとも媒体とターゲット層がミスマッチなのでしょうか。ぜひ高橋先生には最後までこのメッセージを貫徹していただきたいと思います。

個人的に高橋先生の作品では「地雷震」のニヒリズムが圧倒的に大好きで、友人から1巻と2巻を読ませてもらい、あまりの面白さにそこから全19巻を買い揃えた思い出があります。私の好きな漫画ベスト5に入ります。

しかし、「ヒトヒトリフタリ」は私の中では「地雷震」を超えるかもしれません。
「この国を失うリスクと恐怖」を、私自身が忘れないために。