『自分の意志で偉大になる』-書評「ビジョナリー・カンパニー 4」 | 京都プランナー日記

『自分の意志で偉大になる』-書評「ビジョナリー・カンパニー 4」

『ビジョナリー・カンパニー 4 自分の意志で偉大になる』

マネジメントの世界では言わずとしれた「ビジョナリー・カンパニー」の第4部をようやく読了。


今回のテーマは2つ。


1.不確実な時代と業界において、不確実な状況にある中で急成長できる企業がいるのはなぜか

2.その急成長した企業は果たして『運が良かった』のか



1については、分析開始(IPO)時に必ずしも大企業ではなく、経営基盤が充実していない状況ながら業界の株価平均を上回るパフォーマンスを残し続けた企業を10X型企業(テン・エクサー)として、同等の比較企業をリストアップし、綿密な分析を行なっている。


2については、「運」を「イベント」とし、

「自らの行動と無関係に起きている」

「良い悪いにかかわらず潜在的に重要な影響をもたらす」

「事例が予測不可能な要素をふくんでいる」

という3要素に定義し、幸運と不運が10X型企業と比較企業でどのように訪れているかを分析している。


彼らは果たして運が良かったのか?

急成長ができたのは組織や個人の努力ではなかったのか?

10年で7割が消えると言われる企業の世界で生き残るには、自らの意志や努力の影響は限定的でしかないのだろうか。


決定論的な因果関係を証明することができない社会科学において、これらの問いは非常に重要な意味合いを持っている。


この問いに明確な回答を加えることが、本書の大きな存在意義であろうと思う。


そのために約75社、合計で6000年以上の企業史が調査されていると言っても過言ではない。


本書では、「運」に関する問いについて、明確に「ノー」と(あくまで社会科学的にではあるが)否定している。


10X型企業は全て、自らの意志で成長し、偉大になっている。

そして、それらの企業に共通する取り組みをわかりやすいレトリックで表現し、概念化している。


インテル、マイクロソフト、アップルなど日本にとって馴染みの深い企業がなぜ偉大であるのか。偉大になったのか。


これらの企業は最初から偉大であったわけではない。未来を創造したのである。


その創造論のエッセンスが本書の中に含まれているという点で、ベンチャー企業を中心として様々なマネジメントに応用が可能なのではないだろうか。


本書の著者ジム・コリンズはドラッカーの次世代となるマネジメント思想のエバンジェリストと言われている。

日経ビジネスのインタビューを拝見する限りは「ビジョナリー・カンパニー」シリーズは一旦終了の可能性もあるが、より新しいマネジメント思想をこれからも提示してくれることを期待したい。