現役騎手だからこそ力を持ち得る内部告発-「騎手の一分 競馬界の真実」 | 京都プランナー日記

現役騎手だからこそ力を持ち得る内部告発-「騎手の一分 競馬界の真実」

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「昔は面白かったんだけど、最近は何かしらけるよね」

このような言葉は中老の懐古思想と捉えられがちだが、こと競馬においては現実のデータがまさにそれを物語っている。

競馬場への入場者数は1996年の1,411万人をピークに、2012年は6割減の619万人。
JRA(日本中央競馬会)の売上高は1997年の約4兆円をピークに、2012年は約4割減の2兆4,000億円。低迷が続いているのはだれの目にも明らかな状況となっている。

世界に通用する馬づくりを目指して、現実的に世界トップレベルの競走馬が生まれているのに、なぜ野球やサッカーのように市場が広がらないのか。

この書籍はだれもが認めるトップジョッキーである藤田伸二騎手の、内部告発ともいえる本である。内部崩壊が進む競馬界の現状とこれからへの提言、騎手として求められる本当のスキル、そして自身のこれからについて、独特の語り口でわかりやすく語られている。

「変わらなければいけないのはJRAだ。」
藤田騎手は繰り返しそう述べる。
外国人騎手の問題、結果優先でラフな騎乗が看過される現状、大グループによる寡占状態、エージェント制度…。これら全てにおいては、個々のプレーヤーの責任は一部に過ぎない。重要なのは運営側(JRA)による、中長期的な視野に立った仕組みづくりであろう。

全盛期の2割となってしまった、競馬学校騎手課程への応募数への対策などはその最たるものであろう。このままの状況が続けば、そのストーリー性とカリスマ性から熱狂的なファンと執拗なアンチを生み、競馬の裾野を大きく広げた武豊騎手のような存在は決して生まれそうもない。


JRA、外国人騎手に本免許 8月上旬発表へ


最近もこのようなプレスリリースがあったが、本当に優先すべき施策が何なのかを取り違えているのではないだろうか。
私自身、たとえばM.デムーロは非常に好きな騎手であるし、彼が並の日本人以上に日本を愛していることは有名である。
しかし、これはあくまで産業として考えた場合の優先順位の問題である。

外国人騎手に日本競馬市場を開放するということに関して、どこに目的があるのか全くわからないが、少なくともファン不在の決定だと考えざるを得ない。


Webを通じたPRなど、JRAは確かに広告手法は上達した。
(JRAというよりは広告代理店であろうが)

しかし、本質的に重要なのはその「サービスそのもの」であり、競馬場で生まれる感動や物語である、ということをJRAは見失ってはいないだろうか。


私自身も今年の日本ダービーを見るまでは、20年間見続けた競馬から離れようと考えていた。2012年の諸GIレースに象徴された、大グループの社内運動会のような状況に心から嫌気がさしたからだ。
私のような存在は日本中に数多く存在することだろう。


もう間に合わないかもしれないが、それでもJRAには「仕組みの改善」に一刻も早く目覚めてほしいものである。