新しい経済原理による新しい成長 - 「里山資本主義」
里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
■「里山資本主義」とは
かつて人間が手を入れてきた休眠資産を再利用することで、原価0円からの経済再生、コミュニティー復活を果たす現象。安全保障と地域経済の自立をもたらし、不安・不満・不信のスパイラルを超える。
(本書裏表紙より抜粋)
電力をはじめとするエネルギー、金融、貨幣。それらは現在グローバルマネー資本主義の元に、様々なリスクにさらされている。
アメリカの金融はもちろん、ヨーロッパの信用不信やアラブ情勢が日本の片田舎のガソリンスタンドの経営にインパクトを与えるのが現代の常識であり、それらの事象はすべてやむを得ないことだとされている。
そういったグローバルマネー資本主義に対する一つのオプションが、この「里山資本主義」となる。
ただし、これは何もこれまでの資本主義をいきなり総否定するわけではない。これまでの資本主義の功罪の中で「功」であった部分となる効率化や利便性は受け入れつつ、「罪」の一環として喪われた地域経済との関連や人間の相互信頼を取り戻していくための取り組みを行うことを意味する。
本書ではそういった観点から活動している様々な事例を解説つきで紹介している。
個々の事例はそれぞれまさに「価値の展開」というべきエッセンスが含まれており、とても刺激的な内容。著者が「100年の常識を打ち破る提案の旅」というのも非常に頷ける。
これまでにどの国も体験してこなかった人口減少、少子高齢化の道を進む日本。
だからこそ、新しい価値観を創造していくことが必要である。
それは都市に住む我々にも決してできないことはないと、個人的には日々感じている。(都市の人口だって当然これから減少していく)
本書ではいわゆる「田舎」の事例ばかりとなっているが、あたらしい価値観を考えるうえで、「都市」と「農村・山村」の関連はやはり重要なテーマとなるだろう。
今後新しい事例が多く生まれてくることを期待したい。