「BUTTER CUP」閉店。
約15年に渡りお世話になったジャズ・バー「BUTTER CUP」が8月29日で閉店することになり、餞にお店へ訪問。
私の父は京都が好きで、ジャンルごとに行きつけのお店を持っていた。「BUTTER CUP」のマスター上田さんともそういった関係で生まれた付き合いの一つだった。当時は「厭離穢土」というバーのマスターをしていた。
大学入学時からお店にはよく一緒に行ったものだが、学生時分の私はモルトの味などまったくわからず、(今も微妙ではあるけれど)もっぱらビールやカクテルばかりを注文していた記憶がある。量は変わらず多く、マスターの奥さんからは苦笑いをされていたと思う。
学生時代にイラストレーションの企画集団をやっていた時には、このお店をテーマにイラストを描かせてもらおうと話を聞きに行ったこともある。結局、実になることはなかったのだが、それもまた一つの若気の至りの思い出といえるだろう。
店舗は「厭離穢土」から「BUTTER CUP」へ変わり、私も社会人になり、また家族を持つようになった。
兄が結婚する前に、両親と4名でバーに訪れた時には、「家族全員でジャズバーに来るような、こんな家族はいない」と喜ばれたもので、昨日訪問したときもその時のことをよく覚えていた。
マスターのジャズや人間に対するこだわりや、それを体現した生き方。
私はマスターに何を教えてもらったわけでもない。
しかし、時代は変わっても変わらないものがある、
ということを昨日もしっかりと心に刻み込むことができた。
今の私の状況をウンウン頷きながら聞いてくれたあと、
「平たく言って、がんばってね」と彼は言った。
私も同じ言葉を返させていただいた。
一時期心配だった体調も今は大丈夫とのことなので、新たに開店する日を心待ちにしておきたい。
餞別にいただいたコースターと「GLENGOYNE(グレンゴイン)21年」。
口に含むとモルトの豊かでやわらかな味わいが広がり続ける。21年という時間は伊達ではない。
そして私たちの人生はこれからも続いていくのだ。